Keso de Bola とは、 「表面は赤いのに中は黄色い」フィリピンのボール型チーズ。転じて日和見主義者。       かつてお世話になった、現地の言葉で「灯台」と呼ばれるマニラ湾岸のスラムを、ガラス越しに。
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選挙××研修生××介護士
 明後日から2ヵ月間、またマニラに住みます。今度こそ、なんとかして博士論文を仕上げてきます。
 4月中旬に帰国してから3ヶ月余りのあいだ日本にいましたが、ついに慣れることができないまま。あいかわらず日本のスーパーの品揃えにいちいち感激してしまうし、いろいろな刺激的なものに逐一反応してしまうし、人混みは怖いし、繁華街やデパートなんて、まともに歩けません。

 日本を離れると8月30日の衆議院選挙に投票できないことが心残りです。マニラの日本大使館に在留届は出すつもりですが、「在外選挙人証」はそんなにすぐに発行されるものではないのです。
 何度も書いていますが私は選挙が好きで、新聞社の世論調査や市役所での開票のアルバイトをしたこともあります。次はぜひ政党事務所で働いてみたいものです。今回、選挙前のキャンペーン風景を生で見ることができないのが、ことごとく残念です。「郵政選挙」のときもフィリピンにいたし、2年前の参議院選もフィリピンだったし、久しく日本の選挙というものを見ておりません。
先の参院選のとき(安倍政権下で麻生さんが外務大臣だったとき)はちょうど仕事が忙しい時期で、投票日にも日曜出勤したものの、隣席の上司(選挙速報を録画してまで見るという無類の選挙好き)と一緒についつい一日じゅうTVにかじりついてしまって、ちっとも仕事が進まなかった思い出があります。
 今回はあれよりもずっとずっとおもしろそうな選挙なのに…。ああ、残念。日本大使館は在外投票の補助員のアルバイトを募集しているそうなので、博士論文さえなければ本気でぜひ応募したいのですが…。

 先日、『選挙(Campaign)』というタイトルの映画のDVDを観ました。2007年の作品です。監督はNY在住の日本人。外国人の目から見ると奇異にみえる日本の選挙を取り扱ったドキュメンタリーで、ベルリン映画祭フォーラム部門にも招待されたそう。これは、文句なしにおもしろいです。インターネット通販でわざわざ英語字幕版を探して買ったので、フィリピンの友人たちにどんどん貸そうと思います。(←マニアックすぎる楽しみ方!)

 ドキュメンタリーといえばもう一つ。昨年11月のBlogに書いた、Far Distance Beneath the Sky(遙かなる空の下で)の第2話も、先日、DVDで観ました。南大阪の企業で「研修生」として働くRが研修中に難病にかかり入院したときのストーリーです。実名で登場していた社長さんはRに同情的で、逆に、フィリピンの送り出し機関と日本の受け入れ機関(私が以前に働いていたところ)への不信感を露わにしていました。元職場の固有名詞が出てきたときには、さすがに驚きました。R本人は受け入れ機関の通訳(私の後任)を批判していました。発病が半年早かったら、間違いなく私も批判されていたはず。
 「異国の空の下で同胞のために活動するフィリピン人」を描くというこのドキュメンタリーの趣旨はわかるのだけれど、そして、「働けなくなったからって国に返すのは研修生の使い捨てだ」という支援団体の言葉は、しごくまっとうで正論なのだけれど…。あまりに一方的な描き方だったので、残念でした。働けなくなったら解雇されるのは、研修生/実習生に限らないんじゃない? フィリピン人は家族のために一生懸命日本で働いて質素に生きている、という描き方をしているけれど、実際、DVDにも登場しているRの同僚は子供もいるくせに収録のずっと前から日本でガールフレンドを作って、奥さんと大変なことになって、送り出し機関の社長はカンカンでしたし、Rと同じ教会に通っていた研修生(やっぱり妻子もち)は愛人の家に入り浸って無断欠勤を繰り返し、ついにフィリピンに送り返されました。彼の帰国前夜、通訳だった私は、彼が逃げないよう、屈強な男性上司3人と一緒に、泉佐野のホテルに前泊しました。…と思ったら、彼はフィリピンで奥さんと別れて日本に戻ってきて愛人と一緒になってしまいました。婚姻ビザ? 細かい事情は知りませんが…。
 国際移動するかどうかに関係なく、フィリピン人か日本人かに関係なく、労働か研修かに関係なく、働くとか家族とかいうのは決して美しいことじゃなくて、そういうどろどろものでしょう?
 別にそんなことをドキュメンタリーにしてほしいと言っているわけではないけれど、「研修生/実習生は劣悪な環境の下で一生懸命に家族のために頑張っています」という一面的な描き方では何のリアリティも伝わってきません。「かわいそう、助けてあげないと」じゃ何も変わらないでしょう。だいたいにおいてフィリピンは自己憐憫が強い傾向にあるのだから!(私は研修生通訳の仕事をしていたとき、同僚の通訳(日本人とフィリピン人のダブル)と一緒に、「ああ、もう、どうしてフィリピン人はこんなにself-pityなの!?」と嘆き合っていました。)

 先月、龍谷大学で開催されたシンポジウム「Who cares? 誰が私たちの面倒をみるの? 介護現場のいま」(龍谷大学アフラシア平和開発研究センター、朝日新聞社共催、記事はこちら)に出席したときも、フィリピン人への日本人のステレオタイプのイメージの再生産を感じました。
 上野千鶴子先生の基調講演はとてもおもしろいものでした。インドネシア人、フィリピン人介護士への介護施設経営者の反応者として、お決まりの「昔の日本人の良さをもっている」、「謙虚で誠実、あたたかい」、「フィリピン人のhospitality」という言葉が紹介されていました。上野先生はこれらを「アジア人へのステレオタイプ」の文脈のなかでおっしゃったのですが、会場には、そうでない方向にうなずいておられる方々多数。カラオケと一緒じゃないですか…。隣席にいらっしゃった社会学者のNさん(フィリピン研究、移民研究)は、
 「hospitalityって、意味違うよね…」
と突っ込んでおられました。
 すでに施設で働きはじめている二名のインドネシア人介護士に「経験談」を日本語でスピーチさせるという演出の露骨さには驚いてしまいました。決してそのお二人のせいではないのです。とてもたどたどしい日本語で 「両国の橋になりたいです」、「自分の家族のためにも頑張ります」と語る姿をわざわざ映し出し、「こんなに努力しているのに日本語の問題で苦労しているなんてかわいそうだ」、「もっと支援しなくては」という空気に持っていく構成が問題だと思うのです。ここはぜひとも、ものすごく気が強くてプライドの高いフィリピン人に、雄弁な英語で、
 「私は貧しいから働きに来ているのではない! 問題だらけの日本の介護業界、福祉業界で働くことで経験を積み、将来に役立てたいのだ!」
と高らかに言い放っていただき、それをきいたときの日本人の反応をぜひ見てみたいなー、と、意地悪なことを考えていました。(以前、かわいくない研修生たち数人が私に、
 「僕は貧しいから家族のために日本に働きに来たのではなく、見聞を広めたいから研修生になっただけ。仕事じゃなくてexposureだと思ってる」
と、強がりなのだか本音なのだかわからないことを言ったことがあるのです。私が、
 「どうでもいいけど、そういうこと、企業さんの前で言うと損だから、普段は『カゾクノタメニ、ガンバリマス』って言っといたほうがいいよ」
と言うと、
 「そのくらいわかってる!」
と一蹴されました。そりゃそうですよね…。)

 その後のシンポジウムでも、パネリストから、
 「インドネシア人は毎朝、60円の味噌汁とご飯で頑張っている。日本の若者にはどうしてそれができないのか?」
という、このシンポジウムの意義を、いえ介護の精神を根本的に無視しているとしか思えない発言や、
 「外国人介護士が24時間相談できる電話窓口をつくるべきだ」
という提案があって、私はNさんと一緒に思わず、
 「どうしてそんなに手厚くする必要があるの!? そこまでいくと、手厚くすることが差別なのでは?」
 「そんなに移住労働者に手厚い国、ないよ!」
って小声で突っ込んでしまいましたよ。どうして24時間のサポートの必要があるの? 保育園じゃないんだから! 緊急なら大使館に連絡すればいいじゃない? (私が通訳をしていたときも、ホームシックと受け入れ企業への不満から六本木のフィリピン大使館に駆け込んで思いどおりに帰国を果たした、見上げた根性の研修生がいました。後日、フィリピンで訴えられて裁判になったはずですが…。)
 
 外国人労働者への勝手な美化と、「腫れ物に触るような」扱いぶり…そこを改めないと、この問題はどうにもならないのではないでしょうか?
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by saging | 2009-07-30 01:09 | 外国人技能研修生・実習生
学会
 先回の投稿を削除したのは、決して「博士論文が提出できなくて失意のどん底にあるから」ではなく、1週間前に京都で行われた比●政治学会でお会いいただいたとても尊敬するK先生から「Blog見てます」と言われて、大いに動揺したからです。
 Blogというのはどなたが見て下さっているかわからないので、あまりセキララなことは書かないようにします。

 比●政治学会に出席するのは初めてでした。4年前に出席させていただいた選挙学会のように数量・モデル分析ばかりかと思っていたのですが、地域研究系の報告も多くて逆に驚かされました。
 私も頭を切り替えて、3月修了を目指して、論文の書き直しを丁寧におこなうことにします。
 8月からタイ調査の予定でしたが、1ヶ月か2ヶ月延期して、論文に決着をつけてしまわなくてはと思っています。

 タイはおあずけ・・・と言いながらも、この週末はタ●学会(伏字にする意味がないのですが、とりあえず)に出席させていただきました。1日目に「現代政治・経済分析」のようなセッションがあり、政治のお話をたっぷり聴くことができて、とても勉強になりました。「今まさに起こっていること」に関する日本人の専門家による的確なブリーフィング+分析に対して、タイ人研究者や留学生(みなさん、恐ろしく日本語が堪能!)がどんどん意見される、という構図が新鮮でした。「現状分析の枠組み」という学術的な側面からではなく、「自分はいまのタイ政治をどう見るか」、「これからタイ政治はどうあるべきか」といったことについて、日タイの両方の研究者・学生・そしてコンサルタントや企業界の方々が意見を述べておられるのが素敵でした。さすが旧き友好国。さすがビジネス・パートナー(もっとも、今年以外のタイ学会をまったく知らないので、想像ですが)。・・・フィリ●ン研究会では、移民系の報告についてはそうした議論に発展することもありますが、政治経済についての報告でこうした流れにはならない気がします。
 2日目は「都市貧困組織」に関する社会学系の報告がなんと5つもあって驚かされました。それも、どれもけっこうな「成功例」。問題点や課題はいろいろと挙げられていましたが、「行政が住民組織化を助けてくれて、貯蓄活動も助けてくれていますよ」というストーリーが成立してしまっているところにびっくりしてしまいました。住民組織化の背景としてアリンスキーが引用されているわりには穏健そうな団体ばかり出てきて、「住民組織が開発の受け皿と化してしまう」ともあったので、どうもよくわからないなーと思って、報告のあとで質問してみると、5つの報告のうち4.5は、行政が組織化した住民組織の話をされていたのでした。私はどうしても、組織化といえば運動系だと思ってしまうので、すでにいろいろなことを色眼鏡で見てしまっている自分を大いに反省しました。
 あと、タイ研究者にしかわからないタイ語の単語が飛び交っていておもしろかったです。
 「今日の報告者はだいたい皆さんホニャララ(タイ語、聞き取れず)ですね。」
みたいな感じ(たぶん社会学って言ったのだと思います)。フィ●ピン研究会で私たちが
 「ミリエンダ、ミリエンダ!」
と言っているのも、はたから見たら奇異なことなのかもしれません。

 次の週末は、「年に1度のお楽しみ」になりつつある、フィ●ピン研究会全国フォーラム。フィリピンにいたときも、このフォーラムに参加するために年1回の帰国休暇と有給を貯めて使っていたくらいの楽しみです。報告にせよ司会にせよ毎回真剣勝負で臨んではいるし、「切るか、切られるか」の緊張感は常に忘れないようにしたいけれど、最近、このサークルのあまりの心地よさにちょっと甘えてしまっています。もっと厳しい大海に飛び出さなくては。タ●学会も地域研究系であることに変わりはないわけだから、もっと、比●政治学会とかア●ア政経学会とかでの発表を目指さなくては。投稿論文も書かなくては。

 ・・・でもとりあえず、来週末は楽しませていただきます。フォーラムでお会いできる皆さま、今年もよろしくお願いいたします。
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by saging | 2009-07-06 01:05 | タイ研究('09~'10年)