Keso de Bola とは、 「表面は赤いのに中は黄色い」フィリピンのボール型チーズ。転じて日和見主義者。       かつてお世話になった、現地の言葉で「灯台」と呼ばれるマニラ湾岸のスラムを、ガラス越しに。
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汚職の言語
 前回の投稿で書いた、“NBN-ZTE”疑惑。
 「この国の上院はまさに流行語メーカー」と書きましたが、NBN-ZTE疑惑そのものも、ましてや、それにまつわるジョークの数々も、決して、フィリピンの大多数の人たちに共有されたものではないということを明記しておかなくてはなりません。だいたい、YouTubeで “NBN-ZTE”なんて言葉を検索しているフィリピン人がどれだけいるのだか!

 3月24日に発表された、民間調査機関Pulse Asiaの世論調査(調査対象は全国の成人男女1200名、調査期間は2月21日から3月8日)の結果によると、「NBN-ZTE疑惑について見聞きしたことがあるか」という質問への回答は、階層によって大きく異なるようです。
 全国        何度もある:69% 数回ある:18% ない:14%
 富裕・中間層  何度もある:90% 数回ある:10% ない:1%
 貧困層      何度もある:70% 数回ある:17% ない:13%
 最貧困層     何度もある:57% 数回ある:22% ない:21%

 「NBN-ZTE疑惑の上院公聴会証人のロサダ氏について見聞きしたことがあるか」という質問に対しては、階層だけでなく地方によっても差が生じています。
 全国       ある:82%  ない:18%
 首都圏      ある:96%  ない:4%
 ミンダナオ    ある:72%  ない:28%
 富裕・中間層  ある:99%  ない:1%
 貧困層      ある:84%  ない:16%
 最貧困層    ある:71%  ない:29%

 私は職場でABS-CBN社の英語ニュースチャンネル「ANC」(ケーブル放送)を一日中付けっ放しにしていますが、朝夕の「ニュースの時間」には、できるだけローカル・チャンネルでタガログ語のニュースを観るようにしています。ローカル・チャンネルとANCとでは、報道ぶりに天地ほどの差があるのですもの。
 3月のある日、私がカンティーン(食堂)で夕食をとっていたとき、店のTVでちょうど、ABS-CBN社の人気ニュース番組「TVパトロール」(毎日午後6:30~)が始まりました。トップニュースはもちろん、NBN-ZTE疑惑関連報道でしたが、一連のニュースが終了したあと、出し抜けに、
 「ところで、“NBN-ZTE”という言葉がいったいどれだけ地方の人々に知られているのか、調査してみました」
とのナレーション。そして、貧困層らしき人々の映像。一人ずつが
 “NBN-ZTE”
と発音しようとして、皆、一様に舌をかみまくっています。
 次は場面が切り替わって、地方のジープニー・ターミナル。ネリ前国家経済開発庁(NEDA)長官がロサダ氏に対して放ったという、“moderate their greed”というすごい言葉についてのようです。
 「”greed”の意味を知っていますか?」
とのナレーション。画面に出てくる貧困層らしき人々は自信なさげな顔で、
 「グリード? 何それ?」
 「うーん…。政府のためのもの?」
 「教育プログラムの一種?」
 「なんか…新しいもの?」
と、とんちんかんな回答を返します。
 それをブラウン管越しに見ているカンティーンで食事中の人々は、
「これだからもう、田舎モン(probinsyano)はダメだな」
と大笑い。あれー。ナレーションはさらに、
「では、”kickback”の意味を知っていますか?」
 回答者たち曰く、
「キックバック…。それって、いいこと?」
「私たちの生活を良くするもの?」
 とどめは、
「キックバック…。シパパバリック?」
カンティーンのお客たちは、よくわからない顔をするグループと、どっと沸くグループに二分されていました。(シパは「蹴る」、パバリックは「戻る」・・・。要するに、「キックバック」をタガログ語にしただけ!)

 「ZTE-NBN疑惑」はやはり、地方の人たち、あるいは貧困層と位置づけられる人たちにはやや遠いようです。でも、「汚職」は、底辺の人たちにとっても非常に身近なもの。単に、レベルとスケールと使われる言語が違うだけで、「汚職」なるものは、全国的に、そして氾階層的に共有されているのです。
 …ということを示す大作が、つい最近フィリピンで発行された“Corruptionary”(汚職辞典!?)。フィリピン大学設立100周年記念出版の一環でもあり、4月7日に行われたBook Launchingの様子がABS-CBNで流れ、Y山先生によるとなんと日本のNHK-BS1でも放送されたそうですから、ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。
 基本的に全編タガログ語ですが、“moderate the greed”や”Kickback”といった最新用語を、キュートな挿絵(風刺画)と生々しい「用例」付きでわかりやすく説明。また、数ペソレベルの賄賂をめぐって路上で使われているスラングの数々も、大変丁寧に、やはり生々しい「用例」付きで解説されています。例を挙げましょう。

 Ninoy(名詞): 500ペソ札(故ニノイ・アキノ上院議員の顔が印刷されている)
 
 Cashpoint(名詞):警察や軍が通行車両に対して行うチェックポイント
 
 Padding Overtime(名詞):残業代稼ぎ
 
 Bubukol(動詞):目に見えて膨らむ。上院のNBN-ZTE疑惑調査で使われた。   
   用例 
    ロサダ氏「私は(アバロス前選挙管理委員長に)これは膨らみますよ、と言いました」
    上院議員「どういう意味だね?」
    ロサダ氏「大きすぎる、という意味です。大きくて目立ってしまいますから、と。」
  
 ※ちなみに、bubukolは「こぶができる」という意味です。で、「用例」(というか、実際の上院公聴会での会話)は日本語ではおもしろさが伝わりにくいので、原文も付けておきます。
  Jun: Sabi ko po, “Chairman, bubukol po ito.”
  Senador: Anong ibig mong sabihin?
  Jun: Masyado po kasing malaki, your honor. Mahahalata po talaga.
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 “Corruptionary”は一冊300ペソ。発行元のCenter for People Empowerment in Governance (CenPEG)という研究所の事務所(フィリピン大学Collage of Social Work and Community Developmentの新築校舎3階)あるいは街なかの大きな書店で購入可能です。タガログ語の勉強にもなり、かわいい挿絵(右は“Bubukol”の項に添えられたイラスト。ズボンのポケットを札束で膨らませているのがアバロス前委員長、その横がロサダ氏です)も付いてとってもお得ですので、マニラにいらっしゃる皆さまはぜひお買い求めください。
 なおCenPEG事務所では、本書に収められたいくつかの用語解説と挿絵入りのTシャツも販売されています。実にマニア向けですが、よろしければどうぞ。
 CenPEGのウェブサイトはこちら。なかなか急進的な先生方がお揃いで、鋭い政権批判の姿勢と、選挙制度、特にParty-List制度改革についての研究で有名です。
 http://www.cenpeg.org/index.htm

--------
 追記。冒頭でご紹介した民間調査機関Pulse Asiaの最近の世論調査ですが、アロヨ大統領のパフォーマンスに対する評価は、
  全国       評価する :23% 評価しない:51%
  首都圏     評価する :11% 評価しない:71%

 アロヨ大統領に対する信頼度は、
  全国       信頼する :19% 信頼しない:57%
  首都圏      信頼する :6%  信頼しない:76%

 特に首都圏の信頼度の低さが気になります。(フィリピンの世論調査は、主にソーシャル・ウェザー・ステーション(SWS)とPalse Asiaという2つの民間機関によって実施されているのですが、双方とも「大統領を支持しますか」という質問は行っておらず、パフォーマンス評価と信頼度が、支持率調査の代わりとなります。)

 これだけでも驚きですが、もっと「??」なのが、上院議員のパフォーマンスに対する評価。高い順に、
 レガルダ上院議員 79%
 エスクデロ上院議員 77%
 パンギリナン上院議員 76%
 ロハス上院議員 72%
 アキノ上院議員 69%
 アランピーター・カエタノ上院議員 68%
 ラクソン上院議員 67%
 マドリガル上院議員 65%
 エストラダ上院議員 64%
 ピメンテル上院議員 63%
 ビリャール上院議長 62%
 サンチャゴ上院議員 56%
 トリリアネス上院議員 55%

 アロヨ大統領に比べて、総じて高いです。それも、反アロヨ色の強い議員ほど順位が高くなっています。大統領派の議員の名前は上位には見当たりません。
 なかでも注目すべきは、トリリアネス議員。この人、2003年のクーデター未遂(オークウッド事件)の首謀者として拘束され、裁判は現在も継続中。反アロヨ政権を体現し、昨年5月の中間選挙で見事上院議員にて当選してしまったのですが、拘束中の身ゆえ、当選後なんと一度も登院したことがありません。さらに昨年11月には、クーデター疑惑の公判中にマカティ地裁を飛び出して1キロ以上の公道を平然と行進した挙句にペニンシュラホテルに6時間立て篭もる…という、とんでもない事件を起こしていらっしゃいます。一度も登院していない時点ですでに、上院議員としての仕事は何もしていないのではないかと思うのですが…この調査では実に55%もの人が「トリリアネス上院議員のパフォーマンスを評価する」と回答。いったい、どんなパフォーマンス? まさか、ペニンシュラホテルでのパフォーマンス!?
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by saging | 2008-04-17 20:28 | フィリピン(全般)
NBN-ZTEのジョーク
 昨年9月以降フィリピンのニュースを賑わせまくっている、公共事業の不正入札疑惑、”NBN-ZTE”。例によってフィリピン人は略語が大好き。これだけでは何のことかさっぱりわかりません。
 NBNとは、国家ブロードバンド網(National Broadband Network)の略。全国のバランガイをインターネットで繋ごうという公共事業計画です。そしてZTEとは、本公共事業を入札した中国企業の名前。ZTE社が不当な高額でNBN事業を落札したのがそもそもの発端。この背景事実を巡って、上院で公聴会が続けられています。
 関係する政府高官が証言を拒んだり、関係者証言がそれぞれ矛盾していたりで、「嘘発見器を使え」と言い出す冗談みたいな証人が出てきたりで、疑惑の全容はまだ究明されていないのですが、とある貪欲なグループ+大統領夫妻(Greedy Group Plus Plus)がZTE社と癒着し、受注と引き換えに多額のコミッション(kickback)を得ていた疑惑が持たれています。なんでも、アロヨ大統領の夫君とアバロス前選管委員長が同事業を操作すべくネリ前国家経済開発長官に働きかけ、賄賂を持ちかけ、ネリ前長官は自らの相談役であったロサダ前森林公社総裁に”moderate their greed”と言ったとか。さらにアロヨ大統領夫君は、入札に参加していた実業家デ・ベネシア三世(デ・ベネシア前下院議長の息子)に”Back off!!”と言ったとか。
 ちなみに、横文字で書いたのはすべて上院公聴会での証言で飛び出した生の表現で、巷では流行語と化しています。この国の上院はまさに流行語メーカー。”greedy group plus plus”って、”moderate their greed”って、すごい英語ですよ…。
 不謹慎かもしれませんが、他人事としてみていれば、本当におもしろいです。
 大統領自身が大規模な汚職に絡んでいたかもしれないという事実。一触即発の緊張感があり、決しておもしろがってなどいられないはずなのですが、上院公聴会はまるで劇場のよう。その様子は、テレビとラジオで毎回生中継されます。
 
 おもしろさに輪をかけているのが、派手な登場人物たち。
 まず、デ・ベネシア三世が大統領夫君を名指しで批判したことに始まる、アロヨ大統領夫妻とデ・ベネシア父子の敵対関係。父親のデ・ベネシア二世は大統領との蜜月時代にピリオド宣言をしましたが、アロヨもデ・ベネシアも救いがたいほど汚職にまみれたイメージがありますから、どっちもどっちの「お家対決」。現職大統領の強みに負けたデ・ベネシアⅡ世は、特段に国民の共感を得ることもないまま、2月に議長職を追われました…。
 どこからどう見ても性悪のアバロス前選管委員長。涙ながらに辞任しましたが、どうか泣かないで下さい。2004年総選挙と2007年中間選挙でアンタに泣かされた人はゴマンといると思います。
 ネリ前長官。上院公聴会でたった一度だけ「賄賂について大統領本人と電話で話した」との爆弾発言をおこなったっきり、沈黙を守って大統領に寄り添い、証言を拒み続けていますが、彼に対しては非難より同情の声が強いようです。それは、彼のキャラクターによるものでしょうか?
 そして、ロサダ氏。ネリ前長官と同様に証言を拒んでいたところ、大統領府に目をつけられ、無理やり香港に逃亡させられ、やっと帰国できたと思ったら空港で当局に拉致され、連れまわされ(以上は本人の弁)、修道会に駆け込んで保護され、翌日、修道女らに囲まれながら上院公聴会に出席し、泣きながら証言。その後は吹っ切れたのか「すべてを話す」とばかりにしゃべりまくり、もともと人のよさそうなキャラクターが大ウケして国民的英雄に。各地の大学を回って講演し、「真実の体現者」として若者の圧倒的な支持を獲得。常に修道女らに守られ、アキノ前大統領(いまだに聖母のイメージ)と共にミサに出席して祈る姿も、清廉潔白なイメージ作りに一役買っています。やっぱり、フィリピンは神さまの国。ここはひとつ、パンリロ・パンパンガ州知事(元神父さま)と組んで2010年大統領選に出馬してはいかがでしょうか?

 さすがはフィリピン、ロサダ氏の証言の直後から、ロサダ氏の顔写真入りのTシャツやステッカーが出回り、反大統領集会では”Moderate Your Greed”というプラカードが乱立。
 
 さて、最近話題高騰中なのが、重要ニュースも呆れたニュースも、すべてを笑いのネタにしてしまうこのブログ。かなりディープでマニアックですが、フィリピン政治を追いかけている皆さんは必見のおもしろさです。ぜひ訪れてみてください。
 The Professional Heckler
 http://professionalheckler.wordpress.com/
 このブロガー、「プロフェッショナル」なだけあって、かなり頭がいいのだと思います。日々のニュースをすべてジョークに置き換える意気込みには脱帽です。

 さらに最近ではYouTubeという便利なものができて、とてもオモシロイ画像を見ることができます。
 まずはこちら。名ゼリフで振り返るNBN-ZTE疑惑。
 Jun Lozada vs The Mob
 http://www.youtube.com/watch?v=pkIoJNxVJVc&feature=related

 映像で振り返るロサダ氏の偉業。
 Jun Lozada - A Song
 http://www.youtube.com/watch?v=BBVR_AZnRa4&feature=related

 軽快な音楽が耳から離れません。ABC♪ ZTE…FG♪
 ZTE SCANDAL
 http://www.youtube.com/watch?v=TRmHHo0aFlQ&feature=related
 …FGはFirst Gentleman(大統領夫君)の略。マドリガル上院議員は、「FGって、First Goon? あるいはFirst Gangster?」というジョークを飛ばしていましたが…。

 とりあえず踊る関係者。デ・ベネシア三世の顔がちょっと違うと思うのですが…。
 ZTE Scandal -- Sayaw Darling!!!
 http://www.youtube.com/watch?v=VXzDm5GcCs8

 そのバレンタイン・バージョン。ちょっと悪乗りしすぎですね。
 ZTE Scandal - Get together party!!!
 http://www.youtube.com/watch?v=0WwyMEpVgJk&feature=related

 まだまだ続く名ゼリフ。アバロス前選管委員長は “Burger“を「バージャー」と発音。
 Ben's BURJER - Katas ng ZTE
 http://www.youtube.com/watch?v=_Jq4q1S7SjQ&feature=related

 私が一番好きなのはこれです。ZTE疑惑を映画化するとこうなるようです。
 ZTE scandal movies
 http://www.youtube.com/watch?v=Saa7SVlUapc&feature=related

 この他にも、YouTubeで”NBN-ZTE”または”ZTE”で検索すると、マニアックなオモシロ画像がいっぱい見つかります。(仕事が一段落したお昼休みの、私のちょっとした楽しみです。)
 …いやいや、ここまで深刻な問題を、ここまでジョークにしますかね?
 腐敗に対する「怒りの声」であるはずの路上デモはジョークと音楽とダンスで楽しく盛り上がり、まるでフリーの路上コンサート感覚で参加する若者。真実の体現者ロサダ氏は壇上で拳をあげ、「ハンバージャー(ハンバーガー)が食べたいか~!?」と叫んで笑いをとり、”Back Off!”が着メロになり…。みんな、本当に怒ってるの? なんだか、楽しんでませんか?
 緊迫しているはずの上院公聴会の所々で軽い質問をして笑い始める上院議員。自らに及んだ生命の危険について涙ながらに証言しながらもつられて泣き笑いのロサダ氏。それをラジオで聴き、笑いながら突っ込みを入れているうちの職場のフィリピン人スタッフ。どうして!?と思いながら、私もついつい笑ってしまいます。
 
 フィリピン的だなあ、と思う反面、こういうのって、アメリカの政治ジョークに似ているのかな、と思います。昨夜、娘さん連れで我が家にお泊まりになっていたフィリピン研究者のK田先生に見せていただいたアメリカのトランプ"POLITICARD"も、歴代の大統領や上院議員、知事などが有名ハリウッド映画のパロディになっているというものでした。フィリピン人自身も「フィリピン的」だと信じている数々のことは、実はそうじゃないのかもしれません。最近読んだ中野聡先生の『歴史認識としてのアメリカ帝国』(←ものすごくいいです!お勧め!)には、「フィリピン独自」のものだと思われているサンプルバロット(サンプルの投票用紙)や選挙前のキャンペーンのお祭り騒ぎがアメリカの影響を色濃く受けてきたこと鮮やかに描かれていました。
 サンチャゴ上院議員はNBN-ZTE疑惑に関して「この国に汚職を輸出したのは中国」という、外交委員長にあるまじき爆弾発言をして叩かれていましたが、国際派の彼女のこと、視点としては鋭いものを提供したに違いありません…。
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by saging | 2008-04-05 12:43 | フィリピン(全般)