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Keso de Bola とは、 「表面は赤いのに中は黄色い」フィリピンのボール型チーズ。転じて日和見主義者。       かつてお世話になった、現地の言葉で「灯台」と呼ばれるマニラ湾岸のスラムを、ガラス越しに。
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ある国際結婚
フィリピンで一番仲の良かった友人(女性)が、このたび、結婚することになった。彼女は、マニラのスラムエリアで働く27歳のコミュニティ・オーガナイザー。私がフィールドワークをさせていただくにあたって、最初に協力してくれたのが彼女だった。私の修士論文にも登場していただいている。私は彼女と一緒に、スラムエリアに小さな家(というよりも小屋)を借りて寝泊りしていた。家の中では水が出ず、屋根の割れ目に巨大なネズミが住みついていて、一晩に何匹ゴキブリに身体の上を歩かれたかわからない、という、忘れようと思っても忘れることのできない生活だった。(もっとも、私は大学の近くに別に部屋を借りていた)。フィリピン大学で安定した事務職についていたのにもかかわらず、コミュニティ・オーガナイザーになることを決意して仕事をやめ、オーガナイザーになるための厳しい訓練を受けていた彼女は、とても忍耐強い人だった。その薄給で、無職の父親と、「できちゃった結婚」をして大学を中退した弟(無職)と、その妻と子ども(つまり姪っ子)の生活を支え、さらに夜はフィリピン大学の社会福祉の修士課程に通っていた。

結婚のお相手は、私と同様、彼女たちのコミュニティ・オーガナイジングの手法を学ぼうとしていた韓国人の男性。私たちはふざけて、レイモン(「冬のソナタ」のヒロイン「ミニョンさん」の異名。なぜレイモンなのかは、まったくの謎です)と呼んでいた。

二人は昨年の2月からお付き合いを始めたのだが、それはそれは大きな文化の違いがあって、私が両方から聞かされただけでも、たとえば、敬虔なカトリック教徒である彼女に対して彼は神を信じない、ボーイフレンドをすぐに家族に紹介する習慣のあるフィリピン人に対して韓国人がそんなことをするのはよほど親しくなってからか結婚する場合のみ、フィリピン人の親族の多さと広さが韓国人には理解できない…など、挙げればきりがないほどであった。
これだけの相違点がある中で、よく結婚を決断できたと思う。
結婚は週末に決まったばかりだそうで、今朝突然、私の携帯電話にその知らせのメールが届き、「あなたも、結婚式立会人の一人になってほしい」という。まずはお祝いを言うためにあわてて国際電話をかけると、二人はさっそく、結婚式を教会でするのか、Civil(人前式)でやるのかという大きな問題にぶつかっているとのこと。そしてなんと結婚後は、アジアにおけるコミュニティ・オーガナイジングの可能性を探るために、二人でカンボジアに留学するという。これでは本当に「冬のソナタ」だ。
この先どうなるのかわからないけれど、まずは、幸せになってほしいと思う。
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by saging | 2004-09-27 23:35 | フィリピン(全般)
FAHRENHEIT9/11(華氏911)
マイケル・ムーア監督の話題の映画、『華氏911(FAHRENHEIT 9/11)』を観にいった。

実は私は7月の初めに、同監督の『ボーリング・フォー・コロンバイン(Bowling for Columbine)』のDVDを観て、そこですでに幻滅を感じていた。「娯楽番組としておもしろかったけれど、ドキュメンタリーとしてはまったくおもしろくない」というのが私の率直な感想であった。はじめからあまりに監督の主張が押し出されすぎている。次にどんな展開がきたって結論は読めてしまうから、なんの新鮮味もない、そんな映画だった。イラク戦争が始まった頃(私はフィリピンにいたけれど)日本でこの映画を絶賛していたのが、ブッシュ政権も小泉政権も初めから嫌っている人ばかりであったことも引っかかっていた。
「本当にちゃんと見て褒めているの? なんだか逆プロパガンダみたいに見えるけど…」
というのが、率直な私の感想であった。

『華氏911』についても、日本で公開されるより前に何度もTVや雑誌、新聞などで前評判を見聞きしていた。「ドキュメンタリーではなくて監督の撮りたいものを撮っただけ」という感想に、まったくだと思ったし、特に観たいとも思わなかった。

…というようなことをフィリピン人の友達にメールで書き送ったところ、こんな返事が。
「僕はすでに、マイケル・ムーア監督の『華氏911』を観た。9・11の陰謀(conspiracy)を描いた作品だ。僕が今までに観た中で最高のドキュメンタリーだった。まさに、スタンディング・オベーションに値する。」
そこで、私たちはちょっとした議論をした。私はこう書いた。
「監督の主観が入りすぎている。イラク戦争開始直後に彼がアカデミー賞の舞台で放った言葉を私はよく憶えている。『僕たちはノンフィクションが好きだが、こんなフィクションの時代を生きている。』ってね。でも、あれがノンフィクションだとは思わない。どこがノンフィクションなのか。切り取られた事実を貼りあわせれば虚偽がつくれるのだし。ノンフィクションを張り合わせればフィクションになる。」
すると、彼は言った。
「ドキュメンタリーとは、現実をそのまま映すことではない。選んだ現実だけを映すものだ。そして、切り取られた事実は、批判的で考えるのが大好きな(君のような!)観客に対してさらされたときにだけフィクションになる。彼の映画はすべて現実世界のカットから成り立っているノンフィクションだが、メタフィジカルな(形而学上の)意味ではフィクションなのだ。」
彼は、ドキュメンタリーにはちょっとうるさい。(ちなみに、彼が学んだフィリピン大学にはフィルム・センターという施設があり、ドキュメンタリーを含むさまざまなタガログ映画がたびたび公開上映されるほか、ライブラリーで過去のフィルムを借りて観ることもできる。)

その1週間後、彼から、8月4日の” Philippine Daily Inquirer(フィリピンの主要紙)” のコラム欄が送られてきた。そこには、Conrado de Quiros氏(同紙のコラムニスト)が”Burning Point”という題で『華氏911』について分析している文章があった。

…ということがあって、私もついに『華氏911』を観ておかなくては、と思うようになった。8月21日に封切りされたが、日本の映画料金は高すぎて普段はとても行く気がしないので、「映画の日」待ってやっと観にいった。

観てよかった。確かに、「ボーリング~」よりはるかに良い。娯楽のレベルも高い。ムーア監督がどこかのインタビューに答えて語っていた「普通の映画として楽しみ、笑って泣いてほしい」という点については、日本でも、そこそこ達成されているのではないかと思う。また、ドキュメンタリーとしても、少なくとも「人々に注目されていなかった事実映像を日の目に晒した」という点では非常に素晴らしいと思う。アメリカの大手メディアが表に出そうとしなかった映像、触れようとしなかった事実、誰も目に留めていなかった問題。それは、『ボウリング~』にもつながる。9・11の第一報を受けたときのブッシュ大統領の態度、イラクの女性の怒り、イラク戦争で無残な姿となった米兵、
「もう一度命令されても、もうイラクには行かない。行くなら牢獄だ。」
と語る米兵、法案を読まない下院議員、職のない若者に軍隊入りを勧めるリクルーター、「反戦運動なんて大嫌いだった」と語る兵士の家族。これらの「現実」を映像としてみせてしまうところが、この映画の最大の強みだと思う。
ただ、それだけならよかったのだが、やはり、多くのメディアがすでに指摘しているように、ある種の誇張や、事実の貼りあわせ、「無理やりに話をつくっているのではないか」と首を傾げたくなる点もあった。そこまで言うなら、結局アルカイダの正体はなんだったのか、ブッシュ一家とビンラディン一家はどのようにして関係を持ったのか、いったい彼らはどのようにして9・11の直後に海外に出られたのか、そのあたりまで説明してもらわないと困る、と思った。事実を見せるだけなら事実映像の貼りあわせだけでもいいけれど、あんなストーリーを作るならば、事実(9月13日にブッシュと中東大使が食事をしただとか、サウジの誰々が某石油会社の役員だとか)だけではなく、それなりの分析と根拠がほしいと思うのは私だけだろうか。
おそらく、この映画が素晴らしいと思う一方でどこか胡散臭く見えてしまう理由は、事実映像とストーリー・メイキング(監督の推測の世界)が巧妙にミックスされているからだと思う。事実映像が衝撃的なので、その勢いでうっかり見せられてしまうけれど、事実じゃない部分もちゃんとあるのだもの。『ボーリング~』のときもそうだった。それぞれは事実だけれど、それらと、監督の描こうとした結論(「アメリカ国民は長年にわたって”危機意識”を植え付けられてきた!」という主張)とは別問題じゃないか、ということだ。なにせ躍動感とメリハリのある映画なもので、ともするとうっかり乗せられてしまうからいけない。ほんとうに「うまくやっているな」という感じだ。

なんだかんだと書きましたが、この映画、とりあえずはお勧めします。観るなら今です。おそらくDVD化されるのは米国大統領選の後になるでしょうが、選挙後に観ると、価値は半分以下だと思います。ぜひ、次の映画の日、もしくは女性の方ならレディースデイには、『華氏911』を。(繰り返しますが、通常料金1800円とはあまりの暴利です。なぜ日本はこんなに映画料金が高いのでしょうか?)

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参考ウェブサイト
『華氏911』 http://www.kashi911.com/
『ボーリング・フォー・コロンバイン』http://www.gaga.ne.jp/bowling/top.html

毎日新聞による露骨な『華氏911』批判  http://www.mainichi-msn.co.jp/geinou/cinema/guide/news/20040813dde018070019000c.html
田中宇氏『華氏911とイスラエル』 http://www.tanakanews.com/e0716moore.htm
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by saging | 2004-09-02 01:37 | その他