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Keso de Bola とは、 「表面は赤いのに中は黄色い」フィリピンのボール型チーズ。転じて日和見主義者。       かつてお世話になった、現地の言葉で「灯台」と呼ばれるマニラ湾岸のスラムを、ガラス越しに。
管理人sagingより
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あのころの未来に僕らは
 ロンドン五輪の開会式には感動しました。あれって、国家とか、近代とか、そして西洋化とかいうもののいちばん美しい部分だけが抽出された、世界でもっとも華麗なショーだと思うのです。聖火ランの演出もポール・マッカートニーも良かったですが、やっぱり見どころは各国選手団の入場行進です。あれ、大好きです。4年に1度のお楽しみです。
 ただ、私の家にはテレビがありません。東日本大震災のあと、仕事以外でテレビを見るのをやめたからです。この世の中でどうしても見なくてはならないテレビ番組なんて、オリンピックの開会式と、選挙の開票速報くらいしか思いつきません。
 テレビを見る必要が生じると、私はいつもジムに出かけ、カーディオ(有酸素運動)マシンの前に取り付けられた小型テレビを見ることにしています。昨日の開会式もそうやって鑑賞しました。それなりに正しいオリンピックの観賞方法だと思います。画面の中の一体感や「スポーツマンシップ」と、自分の孤独感のギャップがものすごいのですが。おまけに、ジムのマシンのテレビ画面って、動きを止めると消えてしまうので、開会式をぜんぶ観たかった私は3時間弱もマシンを動かす羽目になってしまったのですが。まさか3時間同じ運動を続けるわけにもいかないので、トレッドミルやエアロバイクやクロストレーナーやステップマシンを交互に使いながら、なんとかHey Judeまで見届けることができました。すごい達成感です。いろいろな意味で。

私が国際協力業界に引き寄せられたのは小学6年生のときでした。バルセロナ五輪の夏です。テレビでその華やかな開会式の様子を観て、「スポーツは国境を越えるんだなあ。どこの国の選手もみんな仲良くていいなあ。」と単純に感動したのですが、その直後に某NGOの子ども国際会議でインドに行って衝撃的な「貧困」に触れてしまい、帰国後はもう、テレビの中のお祭り騒ぎやさまざまな国際交流イベントの映像を観ても決して楽しい気分になることはできませんでした。その「何をしても心から楽しめない思い」みたいなものは、大学に入るまで続きました。そして、唯一それが軽減されるのは、その罪悪感を埋め合わせるためにNGOで活動しているときだけでした。そのようにして私は活動家になったのです。
 高校に入ってから、バングラデシュ、フィリピン、エチオピア、ウガンダに行きました。いずれのときも、上のような気持ちは変わりませんでした。気持ちが晴れるのは自分の関わるそのNGOの活動が成功したときだけで、だから、永遠に活動をやめてはいけないような気がしていました。自分の楽しみのために時間やお金を使ってはいけないと思い続けていました。何度か、同年代の活動仲間と一緒にハンスト(食事を抜いて募金する)をしました。(それはハンストとは言わないよ、という突っ込みは控えていただけましたら幸いです。)
 高校3年生のとき、「安心してオリンピックを見たい」という趣旨の小論文を書きました。そのときの原稿はまだ持っています。「私はオリンピックの開会式のあの華やかさと世界が一致団結しているようなあの様子がとても好きなのに、インドに行って以来それを楽しむことができないから、これからもNGO活動を続けます、いつか、私を含むすべての人が心からオリンピックを楽しめる世界になるように」という内容の小論文です。いま思えば、ひどすぎる。周りの大人はそんな10代がいたら殴って目を覚ましてやらなければならないと思いますが、誰もそんなふうにはしてくれませんでした。むしろ、私のそうした「罪悪感たっぷり」な文章は当時、高校の先生たちにも大人にも受けてしまって、私は高校在籍中に3回も小論文/エッセイコンテストに入賞し、海外に連れて行っていただきました。

 映画『クワイエットルームにようこそ』で、蒼井優演じる拒食症の入院患者が、自分が拒食症になった理由を「自分が一食たべた分、世界のどこかの価値のある誰かの食事が一食減ると思ったら食べられなくなった」と言うシーンがあります。蒼井優は一見、他の患者よりはるかに「まとも」に見える役を演じているので、というかほかの演出が壮絶すぎるので、あまり印象に残らないシーンかもしれませんが、私にとっては、あの静かな狂気がいちばんのリアリティです。あれって、入院とか薬で治るものじゃないと思います。
 
 幸いなことに私は狂うこともなく、入院とも薬とも無縁なまま、大学入学を直前に「これではいけない」と思ってNGOの活動をいっさい辞め、大学では、自分のためだけに時間とお金を使う生活をしようと決意しました。そしてその試みは幸いなことに成功し、私は大学に入った途端にひどく享楽的になりました。周りの友人たちは大学に入ってからNGOやボランティアに目覚めていったというのに。

 いまは、普通に享楽的に生きています。テレビは好きではないけれど、あれば普通に見ます。バラエティもお笑いも歌番組も楽しめます。良かった、普通の大人になれて。
 
 五輪開会式。
 ものすごく多くの影を抱える各国が、汚いものばかりに満ちている世界が、そして混沌をきわめるロンドンが、あれだけの美しさを、あれだけの虚構の一体感を創りだしているという事実に、ただただ感動をおぼえるばかりです。各国選手団の行進を見ながら、何度か、うっかり泣きそうになってしまいました。全参加国から女性選手が派遣されてよかったねとか、4年後には南スーダンの選手も自国から出場できるといいねとか、シリアの選手も早く自国に戻って練習できるといいねとか、簡単にそんなふうに考えるべきではない陳腐で単純な感想を自分のなかで繰り返しながら、ともかくマシンを動かし続けることの肉体的苦痛が強すぎて、だんだんどうでもよくなってしまいました。
 よく女性誌とかに「テレビを見ながらできるエクササイズ」が特集されていますが、そのたびに私は、「そんなに頑張らなくてもいい方法があります。テレビはジムで見ればいいんです」と教えてあげたくなります。
 ジムって本当に万能です。テレビが見られるのはもちろん、そしてシャワーやお風呂が充実しているのはもちろん、注目すべきはラウンジの使い勝手の良さです。マニラやバンコクにいたころから、私はジムのラウンジに本や論文やラップトップを持ち込んで勉強したり、朝から新聞を読みに行ったりしていました。周りにもそんな中間層や外国人がたくさんいました。いま通っているジムのラウンジにも、何時間も普通に仕事らしきことをしている人たちがたくさんいます。(休日の自宅に居場所がないのだと思われるお父さんたちも。) ジムは静かで涼しくて(冬は暖かくて)、周りには健康でエネルギッシュで前向きな人たちしかいないので、仕事の効率が格段に上がるのです。飲食も自由ですから、一日中いられます。トレーニングウエアのまま仕事をして、それに飽きたら、また走ったり泳いだりお風呂に入ったりすればいいのです。
 今日ももちろん、一日中ジムで本を読んだり仕事を片づけたりしていました。自宅が暑すぎるこの時期、モールやファストフードやファミレスに逃避している方々はたくさんいらっしゃると思いますが、避暑ならがぜんジムがおすすめですよ~。

 最近、国際協力NGOで働く自分のアンビバレンツについていろいろ考えているのに加え、昨日の開会式のせいで、さらにいろいろ頭と心を使ってしまい、自分の心の振れ幅についていけなくて、なんだか気持ち悪く疲れてしまいました。
 こういうときは身体を動かすに限ります。私は永田町に勤めていた時から、ほぼ週4-6日のペースでジムで運動しています。最近はほぼ毎日です。残業後の22時台からでも行きます。4月からはランニングサークルに所属し、週1回、20時半から迎賓館や皇居の周りを走っています。ランニングは大嫌いですが、信頼できるインストラクターやジム仲間に勧められてやってみたら、ちょうど季節が新緑の美しい頃で、外を走ることは気持ちが良くて楽しくて、続けられそうな気がしたのです。もちろん私は超初心者なので1キロ7分くらいかかるし、走っている最中はそれこそ意識が飛びそうなくらい苦しいし、間違っても一人で外を走りたいとは思わないのですが、インストラクターやジム仲間と一緒なら走ろうという気になります。ただ、最近は蒸し暑いせいで苦しさにも拍車がかかります。
 終業後にジムに行くってものすごく疲労しますし、朝食の量は倍くらいに増えましたが、適度な疲労とストレス解消のおかげでお酒の量も減り、毎日が快適な感じです。私は32歳ですが、ぜんぜん体力が衰えた気がしません。むしろ増進しています。
 今日も、筋肉痛にもかかわらずBody Combat(格闘技系)のクラスに出て、ジム仲間と暴れてきました。五輪に関連して思い出してしまったいろいろなことを振り払いたくて。激しい運動と筋トレをして、もう本当に体力の限界、と思ったところ、スタジオからDancing Queenがきこえてきたので、つい、踊りに行ってしまいました。この曲はいつもフィリピンを思い出させてくれます。
 そして今日は心から、本当に気持ちよく疲れました。こういうのも「身体性」っていうのでしょうか。それはよくわからないけど、とにかく、ジム、最高です。明日からの1週間も頑張れそうです。(でも、明日の筋肉痛は心配です。)
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by saging | 2012-07-29 18:03 | フィリピン研究